英語を「コミュニケーションツールとしてどう生かすか」

さとうみゆき (会社経営)

千葉県市川市出身。1995年に渡米し、サンディエゴ州立大学でジャーナリズムを専攻。卒業後に経済新聞社、マーケティング会社に勤務し、2002年にフリーランスのライター/リサーチャーとなる。そのスキルを生かして起業し、現在はマーケティング会社を経営。著書に「ビジネス英語 伝わる!電話フレーズ400」と「写真で覚えるビジネス英語」シリーズがある。ロサンゼルス近郊のオレンジカウンティ在住。 http://www.cimplexusa.com

【学科ではなく、言語としての英語】
英語は特に好きではありませんでした。でも高校2年生の時、友達が通っている英会話スクールの話を聞いて「なんだか楽しそう」と思い、私も通ってみることにしました。そこで初めて学校の科目としてではなく、言語としての英語というものに触れ、外国語を話すことの面白さに気づいたのだと思います。

そのスクールでは世界のさまざまな英語圏から来た講師が教えていて、彼らを通じて知る外国はとても興味深いものでした。英語が理解できれば未知の世界を知ることができる、より多くの人と交流を持てるということを、その頃から意識し始めるようになりました。

 

【いつか必ず戻ってくる】
sato m1海外に行ってみたいという気持ちが次第に強くなり、大学3年の時に短期留学しました。行先はロサンゼルス郊外にあるライトウッド(Wrightwood)という小さな街。ホームステイしながらESLに1ヵ月通いました。英語は必要最低限の話がなんとかできるようになった程度ですが、アメリカという国を目で見て肌で感じたことが大きく、とても意義のある留学でした。

というのも、アメリカから帰国する時、「このままでは終われない」という気持ちが芽生え、「いつか必ず戻ってこよう」と自分に誓ったのです。留学は楽しかったけれど、外国語でのコミュニケーションは一朝一夕で実現できるものではなく、まだまだ努力が必要だと痛感しました。このまま中途半端に終わるのではなく、自信が持てるようになるまで英語を勉強しようと思ったのです。

 

【再び渡米】
sato m2日本で大学を卒業し、就職して3年後に留学のため再び渡米しました。留学の目的は単なる英語の上達ではなく、アメリカでジャーナリズムを学ぶことでした。その時私は、報道を自分のプロフェッションにしたいと考えていて、そのための訓練を受けること、より多くの人にインタビューできるように英語を磨くことが必要だと思ったのです。

ジャーナリズム学科での毎日は悲惨でした(笑)英語はおそらく小学生レベルという私にとって、取材をしたり、記事を書いたり、ラジオのレポーターをしたりという課題は、苦しくて苦しくて仕方ありませんでした。ひどい文章を書いてクラスメートの冷笑を買ったことも、一度や二度ではありません。それでも、荒療治を受けるうちに英語も少しずつ追いつき、夏休みには地元の新聞社でインターンとして働かせてもらいました。生まれて初めての署名入り記事は英語で書いたのです。今見ると恥ずかしいほど拙い内容ですが、今でもこの記事は大切に取ってあります。

 

【スキルをどう生かすか】
大学卒業後、日本に戻って再就職するつもりでしたが、たまたまロサンゼルスで就職先が見つかり、せっかくのチャンスだから働いてみることにしました。その後、ロサンゼルスの別の会社に転職しましたが、自分のスキルを生かしてやりたい仕事を目指すためにフリーランスになりました。大学と仕事を通じて、私は2つの言語で取材し、執筆するというスキルを得ました。それを自分の強みとしてもっと伸ばしていこうと思ったのです。

結果的にそのスキルが企業のPRや情報収集に役立つことが分かり、仕事の幅が報道から企業向けのサービスに広がっていきました。今、日本の企業は英語で世界に向けて発信することが求められています。そのために必要なのは、異なる言語と文化を理解し、効果的なコミュニケーションを図る能力です。私は、自分のスキルと経験がこの分野で大きく生かせると確信しました。

 

【起業と会社経営】
sato m4フリーランスとしてやってきた仕事をより充実させるために、2012年に会社を設立しました。英語でのコンテンツ制作、広報、市場調査といったマーケティング業務全般を手がけています。経営者になるなど留学当時は考えてもいませんでしたが、自分のスキルにこだわって追及してきた結果、こうなったのだと思っています。

私の在米生活は2015年1月に満20年を迎えました。長い年月には紆余曲折がありましたが、英語を活用できるように努力してきたことは、本当によかったと思っています。私の立場は今、自分のスキルを伝えて次世代を育成することにシフトしてきています。英語に関しても、「コミュニケーションツールとしてどう生かすか」という課題を常に投げかけています。英語を学んでいる人には、常にそのことを意識しながら先へ進んでいって欲しいと思います。